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炎の王妃~月明かりに染まる蝶~
第8章 不測の淵
「―」


 言葉もないオクチョンに、大王大妃が囁いた。





「これからは特に心するのだ。皆がそなたの出方を興味津々で見守っておることを忘れるな。出る杭は打たれるというのがこれまでの後宮のあり方であった。さりながら、これまでそなたに誰も手出しができなかったのは、ひとえに主上の寵愛が殊の外厚かったからだ。とはいえ、王の母たる大妃がそなたを本気で打ちにかかれば、流石の主上もそなたをどこまで守りきれるかは判らぬ。そなたもよう存じておろうが、主上はひとかたならぬ孝行息子ゆえ」
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