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VERTEX
第13章 お城…



教会の庭に並べられた机の上に売り物を並べて販売する程度のバザー。

要らなくなった服…、読まなくなった本…、聴かないCDや観ないDVD…。

それらを売る人の中で私達学生は教会が作ったクッキーを販売する。

ジンジャークッキー…。

今日は土曜日だからほとんど売れる事はない。

明日ならば礼拝に来たついでに買ってくれる人がいるとは思うけれど今日は何もない日だからお客よりも売り子の方が多いとしか感じない。


「こんなところに部外者が居ていいのか?」


聞き覚えのある声がする。

振り返って声の主を確認する。


「勇気君…?」


ジーンズにTシャツ姿の勇気君が何故か私の前に立っている。


「お前っ…、聖女なんだ?」


勇気君が目を丸くして私の制服姿を眺めていた。

聖(セント)マリア女学園…。

略して聖女…。


「悪い?」

「悪くはないけど…、お前ってやっぱり偉そう。」


勇気君が微妙な顔をする。


「そっちこそ、こんな場所で何やってんのよ?」


とてもじゃないが勇気君が敬虔な信者には見えない。


「仕事だよ、仕事…。」

「仕事?VERTEXの?」

「そんな訳ねぇだろ?お前って…、馬鹿?」


呆れた顔を私に向ける勇気君に腹が立つ。


「理梨ちゃん…、お知り合い?」


私の隣りに居た咲良ちゃんが怖々と話し掛けて来る。

男の子と話をしている姿をシスターに見られると後々が面倒な事になる。

下手をすれば月曜日に礼拝堂への呼び出しを受けて祈りを捧げる反省会をさせられる。


「えーっと…、VERTEXの勇気君…。」

「VERTEX?」


咲良ちゃんにVERTEXが通じる言葉じゃない。


「後でな…。」


なんとなく状況を察してくれた勇気君が私の前から離れてくれていた。


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