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第13章 お城…




真っ白で四角い綺麗な建物…。

エーゲ海風をイメージしているらしい。


「エーゲ海?」

「珊瑚もない漁師町の海にそれは無理だろ…。」


やっぱり2人で笑ってしまう。

もう今更に建物のイメージはどうでもいい気分になって来る。


「なんでもいいよ。涼ちゃんと2人になれるなら、お城でもエーゲ海でも同じようなもんだよ。」


南国リゾートを求めてホテルに来た訳じゃない。

ただ2人で逃げたい気分だっただけだった。

日常は練習、練習の涼ちゃん…。

最後の休みだからと息抜きに出掛ければサインや写真を求められる。

それに咥えて私がイライラとすると涼ちゃんにとっては地獄以外の何ものでもないらしい。

車を駐車場に停めて自動扉の中へと向かう。

フロントなどは存在せずに部屋はやっぱり自動案内のパネルで選択するシステム…。


「どの部屋にする?」

「なんでもいいよ?」

「SM部屋とかあるぞ。」

「それは却下します。」


なんでもいいけど早く決めて欲しいと思う。

他のお客とか来たら恥ずかしい…。


「あー…、どれでもいいって…。」


犬男の優柔不断が始まった。

私を気にすると決定という言葉を見失う。

情けない顔で私を見下ろして来る。


「ここ!」


なんでもいいからと適当に真ん中辺りのパネルをスイッチを押していた。

カードキーが出て来ると自動案内が開始する。

廊下を矢印のランプが点滅をして私と涼ちゃんはその矢印の方向へと突き進む。

エレベーターに乗り、また廊下を歩く。

目的の部屋に辿り着きカードキーで扉を開けて中に滑り込むとホッとする。

少なくとも、今しばらくは2人切りになれる。

それだけで、今日はもういいやという気分になるほど気が抜けて、その場にヘタリ込みそうな私が居た。


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