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悪巧み
第4章 非常口 それから
伊沢は、少しがに股になって、音を立てないように、静かに、しかし急ぎ足で階段を下りていった。
素っ裸の、その後ろ姿が滑稽だった。
伊沢は下の踊り場に置いてあった、自分の浴衣を拾い上げ、それで前を隠すと、そこからは足早に下の階に消えていった。
俺は百合子を見た。
百合子はまだ壁に手を突いていた。
俺は百合子に近づいた。
百合子が壁から手を離し、顔を上げた。
俺を見た。
澄ました顔で言った。
「これでよかった?」
百合子が、自分の股間を覗き込んだ。
「やだ、垂れてきたわ。誠一さん。ティッシュ持ってない?」
俺は首を振った。
百合子は回りを見た。
そして近くに落ちていたものを拾い上げた。
指先でつまんでだ。
「伊沢さん、大事なもの忘れていったわ」
百合子がくすっと笑った。
伊沢が脱ぎ捨てたトランクスだった。
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