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竜を継ぐ者~黄の刻印の章~(世界はエッチと愛で救われる)
第18章 彩夏の気持ち
 起きていないのを良い事に、真吾の頬をツンと指で押してみる。
 さっき可愛い顔だと言ったら、怒られたのだ。
 キツい顔立ちの彩夏からすれば、可愛い顔が嫌だとは何とも贅沢な悩みだ。コンプレックスだと言っていたけど、何か過去に嫌な事でもあったのだろうか。
 クラスでの真吾は、いるのかいないのか下手したら気づかない程に大人しい男子だ。
 独りでいる事も多く、積極的に人と関わろうとしない。冷めた雰囲気をどこか漂わせている、ゲーム少年――というイメージを、彩夏は真吾に懐いていた。
 クラス委員長である彩夏は、クラスを纏める時の指針として、クラスメイトを大きく4つに別けている――傾注の不要な人物、傾注の可否が中間の人物、要注意の人物、無害な人物。
 傾注が不要な人物と無害な人物の違いは、同じようでいて違う。
 不要な人物というのは、クラスに溶け込んだ上で、問題を起す可能性が一切ない人物を指している。無害な人物も素行に関して心配は無いが、クラスで浮いてるなと感じる人物がここに位置づけられる。
 真吾に対する彩夏の評価は、無害な人物だった。
 クラスに全く友人がいないという訳でない真吾は、後回しにしたのだ。そんな矢先に、あのような事が起こった。真吾への認識を改めようと考えていたところで、また乗せられてしまうなんて。
 己の失態を思い出し、彩夏は煩悶とする。

「何でまた、あんな事になるのかしら……もう!」

 人畜無害そうな優しげな雰囲気に、油断したのかもしれない。
 真吾は何と言うか……イメージと中身にギャップがあり過ぎて、思わず警戒を忘れてしまう。草食系男子かと思ったのに、詐欺られた気分だ。普段は大人しい真吾に、あんな強引な一面があるなんて……。

「ちょっと……何ドキドキしてんの私、バカじゃない!?」

 母性欲を刺激されるような無邪気な寝顔に騙されてはいけない。無害そうに見えても、やっぱり男の子だ。
 はじめて可愛いと言われたからって、単純にも程がある。
 いくらはじめての相手だからと言って、強引に好きにした相手を意識するとは、どうかしてる。彩夏は、妙にドキドキしている自分に苛立ち、苦悩した。
 だが彩夏が真吾に異性を意識するには、それで十分だった。
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