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竜を継ぐ者~黄の刻印の章~(世界はエッチと愛で救われる)
第18章 彩夏の気持ち
 強引かと思えば優しかったり、ともすれば意地悪なのに正直。本当は思いやりに溢れた、不思議な人――協力する気になったのは、放って置けなかったから。
 でも、今は少し違う。真吾が信じられる人だと、感じたからだった。

「人の上で無邪気に寝てくれるわね、まったく……」

 少し開かれた唇を押してみると、ぷにゅっという感触が伝わってきた。
 案外プルッとしてるんだな、男の子の唇も……。

「何をやってんのよ。本当にバカじゃない……」

 息を感じられる距離に、心音が高まる。彩夏は唇を窄めると、思わず近づけていた。
 鼓動が、だんだんと早くなっていく。
 心では、何をバカな事をしてるんだろうと思う。こういうのを、寝込みを襲うというのではないのか。
 だがそう思う一方で、何故か引きこまれている自分もいるのだ。
 彼の息を意識すると、何かが高まるような不思議な気持ち。唇を重ねてみれば何かがわかるのだろうか……。
 もう少しで重なりそうなその刹那――。
 真吾の瞼がゆっくりと開いた。

「――ぇ……!?」

 いきなり真吾の目が開いて、彩夏はギョッとした。
 釣られたのか、真吾の顔もギョッとする。
 互いに10秒ほど固まっただろうか、緊張が解けると真吾が口を開いた。

「あの……えっと、いったい何を……?」
「えっ?いえ……何って……な、何でもないわよ?」
「だって……顔、真っ赤だけど?」

 彩夏は熱く火照る頬を、隠すように押えた。
 その様子を見て真吾は、怪訝な顔で彩夏を見つめた。彩夏はその視線から逃げるように、ブイッと横を向いた。
 寝込みを襲ったなんて、言える訳ないじゃない!

「何でもないから!何でそんな顔すんのよ、何もないわよ!」
「だって怪しいし……」

 彩夏は焦った。
 このままでは問い詰めらて、吐かされる。何とか彼の気を引かないと……。

「え~っと、滝川くん……で、伝言があるのよ」
「伝言?何それ、この状況で誰から?」

 何とか彼の気を引けたようだ。
 彩夏はホッと息を吐くと、真吾に言った。

「私を襲った、あの幽霊よ……」

 ◇
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