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竜を継ぐ者~黄の刻印の章~(世界はエッチと愛で救われる)
第18章 彩夏の気持ち
 気を失っていた時分の、真名志とのやり取りを、彩夏から聞かされて驚いた。
 あの時の存在に名前があった事も驚き要素だが、驚くべき点は他にもある――刻印が、他にも存在してるという事実だ。だけど同じ能力では無いのかも。同じ力なら、自分にしか無いと言う必要が無いからだ。
 自分の持つ能力が、真吾は逃れ得ぬものなのではと思い知らされた気がしていた。何も聞かされてはいないが、しっかりと歴史に裏付けされた何かがある――そんな予感がするのだ。

「滝川くん、いい加減どいて欲しいんだけど」

 そう言われて、未だ彩夏に被さったままだった事に気づいた。

「あ――ごめん……重たかったよね」

 身を剥がすように起き上がると、ブスッとした顔がホッとする。

「ええ、凄く!滝川くんなかなか目を覚まさないから、とても重かったわ。冷えるし布団には、まあ……丁度良かったけど!」
「ひっでェ。気を失ってた僕に布団て……それはないんじゃない?」
「ぷっ……何なのその顔、子供みたいね」

 口を尖らせて文句を言うと、不意に噴出す彩夏。
 クールな面立ちが優しげに崩れて、目を細めて笑う彩夏の笑顔。釣られるように真吾も思わず微笑むと、彩夏の笑いが何故か哄笑してしまう――真吾も釣られて笑ってしまい、二人は顔を突き合わせて一頻り笑い合った。
 笑いが収まった頃、真吾は不意に窓を見た。
 カーテンから僅かに刺す斜陽は、ほんのりオレンジの色身を帯び始めていた。

「そろそろお開きにするか。先生の所に行く時間が無くなるしな」
「あ、もうこんな時間じゃない!」

 机から降りる彩夏の細い括れを、真吾は腕を回して抱き止めた。ドキリとしたような表情で彩夏は、こちらの方を仰ぎ見た。

「な……何してるのよ、滝川くん。帰るんでしょ……?」

 硬直したようなギクシャクした彩夏の態度は、何だか初心で可愛い。少しは警戒心を懐くようにはなったようだが、まだまだ甘い。
 真吾は、彩夏の心を掻き乱すように耳元で囁いた。

「真名志の所為で中断したけど――エッチするつもりでいたのに残念だなって」

 彩夏の顔が一瞬で赤く染まる。
 てっきり怒るかと思ったのに、意外な反応だ。こんな顔を見ると、悪戯心が起こっちゃうな……真吾は、彩夏の耳珠に微かに唇をつけながら囁いた。

「またあんな真似をさせるようなら――次は本気で抱くよ、彩夏?」
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