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竜を継ぐ者~黄の刻印の章~(世界はエッチと愛で救われる)
第8章 ツンデレ委員長は世間知らず
 腹を見る彩夏の顔は苦虫を噛み砕いたような、何とも言えない表情だった。
 取り乱していないだけ、彩夏はまだ冷静だと真吾は思った。それでも表情を見ればショックや不安を感じているのは真吾にも理解できた。
 真吾はスマートフォンのウェブ機能で、子宮に巣食う寄生物について検索を掛ける。
 矢張り気になるのか、そわそわした様子で彩夏も手元を覗き込んだ。

「ダメだな。それらしいものは引っかからないや……」
「そうなると、発見されていないか若しくは――」
「うん、発見されていたとしても公開できないか――だね」

 言葉を継いで続けた真吾の言葉に、彩夏も同意するように頷く。
 発見した経緯を見ても常識を逸している。これ一つを取ってみても普通じゃないのに、他に普通ではない出来事が三つも起きた。
 自我を失い教室でオナニーに興じていた彩夏。
 身体を乗っ取る意味不明な存在。
 そして彩夏の腹部の発光。
 ダメ押しにこの生物だ……。
 これらは全て関係している事なのではないだろうか。若しかして声の目的は、まさか本当はこの生物にあったのでは――。

「……まだ居るかもしれない――先生に聞いてみようかな」

 ボソリと呟くと、彩夏が顔を上げた。

「生物の澤井先生に?」
「うん……このまま先生の所に寄ろうと思う」

 手持ちの袋に謎の生物をしまいながら教室を出ると、彩夏も後を追うようにして教室から出てきた。

「私も行くわ」
「――エッ!?」

 あまりに意外すぎて顔に少し出てしまった。来なくていいのにという表情が。

「それはちょっと困――いや……何でも」

 咄嗟に不満を言いかけて、真吾はち消すようにすぐさま愛想笑いを浮かべた。

「へぇー……不満なの」
「い……いや、そんな事は……」

 しっかりと聞かれていたようで、それを見咎めた彩夏の機嫌が悪くなる。
 ブリザード吹きすさぶツンドラ荒野を感じさせる彩夏の冷涼な声が真吾を貫く。
 うわぁ――冷たぁい……。
 すっかり普段通りの彩夏の顔を目の当たりにした真吾は、さっきはあんなに可愛かったのにな……と、抱かれていた時の彩夏と今の彩夏のあまりの温度差に震え上がる。
 矢張りクラスを纏め上げる手腕は伊達じゃないなと真吾は思った。

「わ――わかったから、そう睨みつけないでよ……」
「睨まれるような事をしたからでしょう?」
「ぐ……っ」
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