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竜を継ぐ者~黄の刻印の章~(世界はエッチと愛で救われる)
第16章 委員長は責任感が強すぎる
「僕の精液には、陰の気を祓う力があるんだってさ。陽の気が強いって事かな……それが堕児を、殺すんだ」
「何なの?その陰だとか陽の気って……だから、もっとわかるように説明しなさいよ」

 彩夏は苛立ったように、睨みつけた。

「本当に短気なんだから……僕も、説明し辛いんだよ。委員長は、陰陽思想って知ってる?」

 彩夏の方へ視線を向けると首を傾げていた。
 彼女は頭は良いが、こういう方面は疎いようだ。

「森羅万象、宇宙のあらゆる事物を様々な観点から、陰と陽の二つに分類しようっていう思想の事だよ。わかり易いところで、男と女とか太陽と月とか……対極にあるものを、二つの気に別ける考え方さ」
「へ~、滝川くんって意外に物知りね。陰陽ってアレじゃないの、木火……えーと何だっけ?」

 うろ覚えなのか、彩夏の語尾はだんだん怪しくなっていく。

「木火土金水――だよ。五行相克だね。戦国時代末期に五行思想と一体で扱われるようになってね、陰陽五行説になったんだ。僕が言う陰陽思想は、元の方さ……」

 原初は混沌の状態だった。
 混沌の中から光に満ちた明るい澄んだ気である陽の気が上昇して天となり、重く濁った暗黒の気である陰の気が下降して地となった。この二気の働きによって万物の事象を理解し、将来までも予測しようというのが陰陽思想である。
 相反しつつも、一方がなければもう一方も存在し得ない。
 森羅万象、宇宙のありとあらゆる物は、相反する陰と陽の二気によって消長盛衰し、陰と陽の二気が調和して初めて自然の秩序が保たれる。

「――っていうのが、元の陰陽思想。堕児は、混沌から生まれた……平たく言えば、魔物かな」

 言葉を切ると、彩夏は目を丸くしていた。

「おーい委員長、大丈夫……?」
「え……?ええ、平気よ。ちゃんと聞いてるわ」
「そう……?なら良いけど。委員長が自我を戻したのも、僕の陽の気の力の所為らしいよ」

 と言うと、彩夏は首を傾げて「どういう意味?」と尋ねた。

「僕の精液を、偶然とはいえ飲んだでしょ?あれのお陰で、君の体内の堕児の発する気が、少し浄化されたんだよ」

 ニヤッと笑うと、彩夏の顔が真っ赤に染まった。
 相変わらずの、初心で可愛い反応だ。あまりに良い反応を返してくれるので、変な気が擡げかけてしまった。
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