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竜を継ぐ者~黄の刻印の章~(世界はエッチと愛で救われる)
第16章 委員長は責任感が強すぎる
 彩夏は……自分が最初の犠牲者だというアドバンテージを、生かそうとしてるのか。彼女には何の責任もないはずなのに、それでも彩夏は委員長としての責任を考えているのだ。
 クラスの女子に近づいてるかもしれない脅威から守ろうと、その為にあらゆる手段を尽くそうと懸命なのだ。
 逃げたいと一度でも考えた真吾にとって、彩夏の強さは不思議だった。
 立派だと思う。
 思うが……事は、真吾以外には収拾できないものだ。夢で知らされた事実を聞かせたら彼女は、どんな顔するのだろう。真剣な表情の彩夏に、対する真吾の気分は鉛のように重かった。

「責任感が強いのは結構だけど、後悔するかもよ……」

 その言葉が予想外だったのか、彩夏は首を傾げた。

「それは……滝川くん、どういう意味?」
「僕が女性を襲うのを、黙認する事になるけど……それでも良いのかって事さ」

 驚きに彩られた瞳が、大きく見開かれた。
 どうやら、全く想定していない言葉だったようだ。

「先生に話そうとした事にも関係してるけど、夢を見たんだ……」
「夢……?それと女性を襲う事と、何の関係があるって言うの?」
「それが、あるのさ……」

 詰問口調の彩夏に、真吾は少し苦悩した。
 彩夏が関わるつもりなら、全てを話してやるべきなのだろうか。話を聞いて思い止まるかどうかは彩夏次第だが、真吾はできれば思い止まらせたいと考えていた。
 興味本位で関わる理沙なら兎も角、彩夏は責任感だけで関わろうとしてる。
 こんな事に、女の子を関わらせるべきじゃない。

「あの生物の名前は、堕児。あれは……僕でなければ殺せない」
「滝川くんでないと殺せないって?わかるように説明してよ」

 薄暗い部屋の中、カーテンの隙間から漏れる日の光。夕方が近づく放課後の陽光は弱々しく、頼りない光の筋を床に落としていた。
 それをぼんやりと眺めながら、真吾は続けた。

「あの生物は……堕児は、僕の精液でないと死なない……」
「――は!?な……何それ、やっぱり意味わからない。それって……」
「わかるだろ?君は、最初の犠牲者なんだから……」

 彩夏の言葉を奪い、真吾は苦悩するように言い捨てた。
 その言葉に、強気だった彼女の表情が萎むように曇る――何を指した言葉であるか、察したようだった。
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