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身代わりの夜
第8章 待ちぼうけ役員秘書
(遅いなあ。メールぐらい、くれればいいのに)

 加納梨華はケータイを見ながら小さなため息をついた。
 約束の時間を、もうだいぶ過ぎている。

 週末の夜。
 夕方にメールで連絡がを取り合い、最初に出会ったバーで待ち合わせをすることにした。
 それなのに、啓太はまだ姿を見せない。

(女を待たせるなんて……後でたっぷりとお仕置きだからね)

 カウンターでライトビールをちびちび飲みながら、梨華は口を尖らせた。
 しかし、その口角はすぐにゆるやかに上がる。

 啓太のことを考えると、ついつい甘い気持ちになってしまうのだ。
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