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身代わりの夜
第4章 部下ふたり
(それに比べて……)

 席に戻った山野辺が、隣りに座る古森啓太に何か話しかけていた。

 古森はどういう訳か急に落ち着かなくなって、こちらにちらっと赤い眼を寄こした。
 寝不足のようだ。亜沙子がにらみつけてやると、あわてて視線をそらせた。

(まったく、いつもこうなんだから)

 亜沙子は胸底でため息をつく。

 真面目で熱心な青年なのは間違いない。
 作業に時間はかかるが、内容はきちんとしていた。

 もう少し自信をもてば、いい仕事をするはずだと思う。
 そして、部下に自信をつけさせるのも上司の役目だと理解している。

 それなのに、古森を前にすると、どういうわけか必要以上に冷淡になってしまう。
 ついつい、めんどうな業務ばかりあたえてしまうのだ。

(それよりも、この書類を早く片付けないと)

 もやもやした気持ちを振り払って、亜沙子は目の前の資料に集中した。
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