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女社長 飯谷菜緒子
第2章 消えた初恋
もうひとりは代々飯谷工業の経理や営業を担ってきた敦賀家の一人息子の透真で父親は飯谷工業の常務を務めている。営業といっても今は新規の取引先を開拓したりする仕事はほとんどなくまるで親会社のように台頭している居間側重工の御機嫌取りや下請先への賃下げやリストラなどの嫌な仕事がほとんどである。

そんな大人の会社事情などは関係なく菜緒子は翔也や透真を従えて野山を駆け回ったりして自由奔放にわんぱくに遊んでいた。

菜緒子はふたりを従えているつもりなどなく、ふたりもまた従っているつもりなどないのだが、超勝ち気で体育会系の菜緒子と紳士的で知的な翔也と透真というキャラ、そして飯谷工業の社長の娘と部下の役員の息子という立ち位置のためはたからすると菜緒子が翔也や透真を従えているように見えてしまうのであった。

3人はいつも一緒だった。
子供の頃は無邪気に野山を駆け回ったり昆虫を捕まえたりしていれば済んだが、小学生も高学年ともなると菜緒子の胸が大きくなってきたり、お尻もキュートになってきたりして、翔也も透真も女として菜緒子を意識するようになってきた。

それなのに当の本人である菜緒子はそんなことは気にするでもなくやんちゃに過ごしていて、その無防備な女子の姿は思春期の男子にとっては辛いものであった。

スカートなのも全然構わずに木に登ったりする菜緒子を翔也も透真も眩しそうに見上げている。いくら見せパンだとはいえドキドキしてしまう。

翔也と透真はお互いの膨らんだ股間を指差して笑い合った。

「じゃじゃ馬なのは仕方ないとして菜緒子は可愛いなぁ」

「ああ」


「惚れてるのか?」

「まあな、お前こそ惚れてるのか?」

翔也も透真も菜緒子に惚れているのを認め合ったうえで、菜緒子がどちらを選んだとしても恨みっこなしでずっと友達でいることを誓い合った。

「ふたりで何をひそひそと言っているのだ。男のひそひそ話などBLみたいでキモチ悪いぞ。そんなことより登ってこい。カブトもクワガタもいっぱいいるし眺めがいいぞ」

菜緒子に呼ばれて翔也も透真も競争するように木を登り始めた。実は先に菜緒子のところまで登り着いた方が菜緒子に選ばれると願をかけたのだ。

ふたりはほぼ同着で菜緒子のところまで登り着いた。

「本当にカブト虫もクワガタもいっぱいいるなぁ」

「それに本当に良い眺めだ」


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