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第2章 消えた初恋

自身が女社長になるのか婿をとるつもりかは分からないが、一人娘しかおらず飯谷工業の存続は諦めていた父親重盛はキラキラと目を輝かせて飯谷工業を継ぐと言う菜緒子に目を細めていた。

「しかし、男子たちが悪いのです。先生だってそうおっしゃってたじゃないですか。全くあの男子たちときたら・・」

小学生の頃はどの学校にも悪ガキというヤツらがいて、スカートをめくったり物を取り上げたりして女子をからかってイジメたりする。大体は好きな女子に対してそんなことをしてしまうのであるが・・。

そんな男子たちに菜緒子が怒ってケンカが始まる。菜緒子は男子の2人や3人には負けないぐらいに強くて、最後は急所である金玉に蹴りを入れて男子を泣かせてしまう。

「男子たちが悪いのは分かりました。でも先生だっておっしゃってたようにあんなところを蹴るのだけはおやめなさい」と千夏は顔をしかめる。

「もし使いモノにならなくでもなったらどうするのですか」と千夏が言うと、

「あんなモノに使い道なんてあるのですか？」と菜緒子はあっけらかんとしている。

幼い菜緒子にとって男子の股間にあるモノなんておしっこをするためと悪いことをした時に握り潰したり蹴り上げて懲らしめるための急所として付いているモノだとしか思っておらず、その本当の使い道など知る由もなかった。

「きゃはは、♪潰そうぜ　ゴールデンボール　男にとって急所だそこは　蹴り上げろ　ゴールデンボール　そうさ今こそ　懲らしめろ♪、きゃはは」

菜緒子は愉快そうに笑って替え歌を口ずさんだ。

「これ、そんなはしたない歌を歌うんじゃありません」

千夏が顔を真っ赤にして怒るのが面白くて菜緒子はますます調子に乗ってふざけてしまう。男子の股間のモノがどう使いモノになるのか、どうして大切なのかを教えるワケにもいかずに千夏は頭を抱えてしまっていた。

そんな菜緒子はとにかくおてんばでワイルドでスカートなのもかまわずに野山を駆け回ったりとんぼ返りをしたり木に登ったりとわんぱくのし放題であった。まあスカートといっても下は見せパンだし、動きやすいように短パンで行動することも多かったのではあるが・・。

菜緒子には同い年の仲のよい男子がふたりいた。
ひとりは代々飯谷工業の技術を担ってきた亀井戸家の一人息子の翔也であり、父親は専務の職に就いている。