この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
滲む墨痕
第3章 雪泥鴻爪

 まだ帰りたくない、もっと話していたい――そう口に出してしまえる無邪気な子供ならどんなにいいか。落ちてくる雪に目を細めながら夜空を見上げる藤田を見つめ、潤は唇をひらいた。

「そうですね。帰らないと」

 顔を上げ、藤田の向こうにそびえ立つ白緑の竹を視線で辿る。

「帰らないと……」

 もう一度、自分に言い聞かせるように呟く。
 雪が次々と視界を襲ってきて思わず睫毛を伏せたとき、目の前にある長身が一歩こちらに近づき、ポケットから手を出した。

「その前に落としておきましょうね」

 藤田が静かに言って手を上げる。潤の頭を覆うほどの大きなそれは、髪についた雪をそっと払った。

「あ……っ」
「今日は髪がしっかりまとまっているのですね」
「は、はい……少しでも乱れると清潔感が損なわれるので。着付けも綺麗にしなければならないし」

 平静を装って返すと、藤田が思い出したように「ああ」と声をあげた。

「潤さんの着物姿、もう少し見ていたかったな。とても美しくて、僕は卒倒しそうでした」

 さらりと、なんの躊躇もなく、彼は冗談のような称賛を口にした。

/335ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ