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滲む墨痕
第3章 雪泥鴻爪

「我慢しないで」

 見透かしたように発された甘やかな囁きが、誘惑の棘となってじくりと胸の奥に刺さる。瞬間、先端を甘噛みされ鋭い刺激が走った。思わず高い声をあげると、今度は小刻みに震わす舌先に転がされ、その細かな振動が神経を伝い下腹部に甘美な疼痛を広げた。

「ん、あぁ……っ」

 継続的に与えられる快感を少しでも放そうと、潤は腰をくねらせる。だが逃れようとすればするほど、熟した実を押しつぶすように圧を増す振動が、淫欲に膨れ上がった粒をなぶり、いやらしい水音を立てる。
 頭の中が蕩けはじめると、力を失った顎はひらき、だらしない声が漏れる。腕にも抵抗の意思がなくなったことを把握したのかようやく手を離した藤田は、その太い指で薄いふくらみをやわく揉み上げて先端を突出させながら、勃ち上がる頂を舌で迎え入れ、唇で挟む。そうして空気まじりの音を立てて吸い上げる。
 潤は、今までに発したことのない声で応えた。左の乳房のみに集中して与えられつづけた刺激にすっかり虜になっていた。それが右のそれに移され同じような昂りを得たとき、さらに高く歓喜の声をあげた。

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