パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第3章 雪泥鴻爪

　その笑顔を崩してみたい。もっと、とろとろに惚けきった情けない顔を見てみたい。声にならない声を聴いてみたい。自分の手で、引き出したい。潤はそう思った。人生で初めて自覚する気持ちだった。なぜこの人に――考えて答えが出るのなら、こんな焦燥感を感じずに済むのだろう。
　潤はベルトの留め金に触れている指をそっと上に引き、指の背で藤田のへその周りをするりと撫でた。うっ、という小さな低い声が降るとともに、その硬い腹筋がひくりと跳ねる。
　両手のひらを肌に這わせ、筋肉の凹凸を確かめるように上半身を満遍なく撫でまわす。厚い胸板、太い鎖骨、広い肩、そこからまた撫で下ろして脇腹に手を滑らせると、ひくりと反応した藤田は愛撫を避けるように上体を起こし膝立ちになった。

「もうだめです……」

　表情を歪めて囁いた彼は、潤に視線を縫い留めたまま片手でベルトを荒々しく外し、前を開けてズボンを膝まで下ろした。濃灰色のボクサーパンツを履いた猛々しい下半身が晒される。腰から下腹部に刻まれた稜線の先で、硬く育った彼自身が布を突き破ろうと首を伸ばしている。