この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
滲む墨痕
第3章 雪泥鴻爪

 細い道の先に人影が見えた。こんな雪夜に知らない人とすれ違うのはなんだか気まずい。そう思った潤は、踵を返して歩みを早めた。

「潤さん?」
「……っ」

 ひくっと肩を震わせ、振り返る。自分の名前を呼んだ優しい声の主が、足元から放たれる柔らかな光にその洗練された姿を晒されている。

「はは、やっぱり潤さんだ」
「先生……」
「こんなところでなにを――っ」

 小走りで向かってくる藤田が、濡れた石畳に足を滑らせ前のめりになった。驚いた彼が「わっ」と声をあげるのとほぼ同時に、潤の身体にぶつかるようにして接触した。

「きゃっ!」

 そのまま二人で後ろに倒れてしまうと思ったが、藤田がしっかり抱きとめてくれたおかげでそれは免れた。
 厚い上着越しに、人のぬくもりを感じる。あたたかなそれは互いの間に降る雪を溶かす。背中を支える大きな手は、なかなかそこを離れようとしない。

「先生……走ったら、危ないですよ」
「ごめん。気を抜いていました」

 藤田は昨日より親しげな口調で答えた。頭のすぐ上で響いた低い声に酔ってしまわないよう、潤はすばやく身を引いて藤田から離れた。

/335ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ