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いつかの春に君と
第5章 いつかの春に君と
「郁未、入るぞ」
鬼塚は真新しい校長室の扉をノックして中に入る。

郁未はやや緊張したような表情で鏡の前でネクタイを弄っていた。
「まだそんなことをしているのか?朝から何回も結び直しているじゃないか」
呆れ顔の鬼塚に郁未は困ったように鏡越しに視線を送る。
「だって…。上手く結べないんだもん」
「あと10分でGHQの教育局の役人がやってくるぞ。
…貸せ。俺が結んでやる」
つかつかと郁未の前に近寄り、ネクタイを取り上げる。
器用にネクタイを結んでやりながら、揶揄うように笑う。
「お前は相変わらず不器用だな」
「…これは新品だからだよ…。いつもはもう少し上手く結べるもん…」
口を尖らせながら言い訳をする郁未はとても25を超えた男には見えない。
愛らしい童顔も相まって学生のような可愛らしさだ。

鬼塚にネクタイを結んでもらう間、郁未は眩しそうに鬼塚を見上げた。
「鬼塚くん、かっこいいね。スーツも良く似合うし…その眼鏡もすごくいいよ。…やっぱり僕が見立てた通りロイド型眼鏡にして良かったでしょ?」
得意げな郁未をちらりと見て、鬼塚はふっと唇を歪めた。
「別になんでもいい。…さすがに黒のアイパッチじゃ、お役人や新任の教師の受けが悪いから変えただけだ」

…鬼塚は学校設立にあたり、黒革のアイパッチを外し、薄茶色の眼鏡を着用することにした。
それは、鬼塚の怜悧だが端正な貌に良く似合っていた。

「…アイパッチの鬼塚くんはかっこいいけどね…」
郁未は上目遣いにそっと囁いた。

「上野や浅草の孤児たちを捕獲するにはうってつけだったんだがな。…あれを見ると皆んなビビって大人しく俺についてきた。
…これでよし…と」
綺麗に結ばれたネクタイを鏡に写し、郁未は満足げに笑った。
「ありがとう…。
…でもそのせいで、人攫いじゃないか…て噂が立って警察まで出動しちゃってさ。大変だったじゃないか」
鬼塚は可笑しそうに笑った。
「そうだったな」
郁未は頬を膨らます。
「笑いごとじゃないよ。…学校の顧問弁護士の大紋先生が駆けつけてくれなきゃ、鬼塚くん、危うく逮捕されるところだったんだから!
…これからはあんな荒っぽい真似はしないでよね」

郁未の小言を聞き流し、鬼塚は改めて校長室の窓から学校の校庭を感慨深げに眺めた。

…とうとうこの日が来たか…。




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