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いつかの春に君と
第5章 いつかの春に君と
郁未と鬼塚が立ち上げた孤児院と学校は一年の時を経て、この春、漸く現実のものになった。

…この一年は怒涛のような忙しさの日々であった。
洗足池そばにある嵯峨公爵家の別邸を孤児院に改築し、隣の敷地に二階建ての学校を建設した。
劣悪な孤児院から逃げ出したり、或いは行くあてがなく路頭に彷徨っている子ども達を見つけ出し、洗足の孤児院に連れてくるのは鬼塚の役目だった。

ほとんど全ての子どもたちはそれまでいた孤児院で酷い目にあっていた。
警戒心の塊のような子どもたちは、まるで外国のお城のような孤児院に眼を見張り、疑った。
こんなお伽話のような家で暮らせると言われても、俄かに信じるものはいなかったのだ。
このまま外国に売り飛ばされるのだとパニックになる者も現れた。
この家に連れて来たのが、強面の黒いアイパッチ姿の男なのだから尚更だ。

郁未は優しく辛抱強く子ども達に話しかけ、ここは安全な場所だと言って聞かせた。
少女達は小春が率先して世話をした。
郁未の母も張り切って家政婦たちを引き連れ、大磯から出てきた。
岩倉家の家政婦やメイド達も協力してくれた。

全ての子ども達にはまず、帝大病院の医師達により健康診断が行われた。
そして、病気や怪我をしている子ども達には手厚い治療や看護が為された。
何かあった時の為にと、大紋春馬が顧問弁護士を買って出てくれた。
子ども達には、清潔で仕立ての良い制服や寝間着が与えられた。
栄養のバランスが取れた豊かな食事は三度、お茶の時間も設けられていた。

…そんな毎日を送る内に、子ども達は郁未や鬼塚や小春…この孤児院にいる大人たちを少しずつ信頼するようになった。
今まで、まるで野生の狼のようになかなかひとに懐かなかった子ども達も次第に笑顔を見せるようになった。

…ここまで来るまでにいかにたくさんの人達が、この孤児院を…子ども達を…そして鬼塚や郁未を支え励ましてくれただろうか…。

それを思うと、鬼塚の心は感謝の気持ちで一杯になる。

…そして今日いよいよ、GHQ の教育局の役人がこの学校を視察に来る。
そこで問題がなければ正式に学校法人としての認可が下りるのだ。

校庭の桜の樹は、春の訪れを告げるかのように薄くれないの蕾を開こうとしていた。

校門に一台のジープが止まるのが見えた。
鬼塚は未だ緊張の面持ちの郁未を振り返る。

「郁未、行くぞ」



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