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いつかの春に君と
第3章 永遠の花
…鬼塚は二十歳の春を迎えた。
憲兵隊の見習い士官となった鬼塚は、目の回るような忙しい日々を送っていた。
士官学校の寄宿舎から憲兵隊の官舎へと移り住み、市ヶ谷の家にはずっと帰れていない。

男にも会えてはいない。
…正確には個人的には会えていない。
なぜなら憲兵隊本部に常に男はいるから、たまさか職務中に貌を見ることは出来るのだ。

だがまだ入隊したての見習い士官にとって上級将校の男は雲の上のひとだ。
口を利くことすら許されてはいない。

入隊式の壇上で、辺りを睥睨するように堂々と佇んでいた男を思い出す。

男の名前は入隊したての見習い士官たちにも知れ渡っていた。
「…とにかく凄腕らしい。あの人にかかれば危険分子の一味などすぐに一網打尽だそうだよ」
「すごいな…。でも、決して口を割らない面倒なアナーキストもいるだろう?」
「そんなこと聞くなよ。…あの大佐の指一本で粛清されるだけなんだからな」
「…こわ…」

見習い士官たちのお喋りをよそに、鬼塚は黙々と短銃の手入れをする。
鬼塚に気づいた同期の見習い士官が声をかける。
「鬼塚。君の保護者はあの大佐なんだろう?」
一同が騒つく。
鬼塚は手入れの手を止めずに短く答える。
「…ああ」
見習い士官は好奇心に目を輝かせて尋ねる。
「父親じゃないよな?苗字が違う。どうして君の保護者に?」
鬼塚は短銃をホルダーに戻すと、感情を込めずに答えた。
「…俺は人を殺して救護院に入っていた。
大佐は俺を引き取って育ててくれた」
辺りは水を打ったように静まり返った。
鬼塚はホルダーベルトを締め直すと、そのまま無表情に部屋を出た。

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