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two roses & a lily
第9章 退行の解除


ジョンは看護士に連れられて部屋を出た。僕が部屋にいたことには気付いていないようだった。

「退行治療が難しいと身を持ってわかったかな。」

「はい、退行を解除するコツとかあるんですか?」

「ないよ、解除できない原因だって、本人にすらわからないんだ。
今に戻りたくない何かがあるのか、過去に留まりたい何かがあるのか。
単純に考えればそのどちらかだろう。
ただ、我々の知らない過去に戻るんだ。
そして、本人が知らずに傷ついた原因を探るんだ。壊れるほどに傷ついた体験をもう一度体験させるんだから、何が起こるかわからない。
その上で、間違った方向を修正させ、場合によっては記憶を塗り替えなきゃならない。
上手くいくという保証なんかないんだ。」

「はい。」

「でも君が、すぐに迎えにいって、刺激しないようにして連れ帰った行動力は素晴らしかったよ。」

「やはり、しばらく一人にしない方がいいでしょうか。」

「今回、昼寝して目覚めたら退行してしまったんだよな。
今も、あえて今の記憶に戻したけど、だからといって退行しないとは言えない。
そうすると、出来る限り、側にいた方がいいだろうな。」

「そうですよね。しばらく学寮に一人で居させないで一緒に暮らします。」

「うん、それがいいと思うよ。」


カウンセリングを終え、ジョンが出たのとは違うドアから出る。

「ジョン、帰ろうか。」

「ボブ、すまない。あの街まで迎えに来てもらって。」

「いや、いいんだよ。一緒に治療に取り組むんだろう?」

「ああ、」

「それと、ジョン、しばらく家に一緒に住もう。」

「それは、メアリーにも悪いし、」

「いや、一緒にいた方がいい。何かあった時に対応出来るし、もし、君が、僕の知らないところに行ってしまったら、探せないから。
学寮に行って手続きして、必要なものを持って家へ行こう。まずは、今からの授業に出るよ。」

「あ、ああ。」

「何か言いたいことがあったら話してくれ。
一緒に治そうとサインしたんだ。僕たちの間に言えないことがあっては良くない。」

「すまないな、ボブ。」

「友達なんだ、お互い様さ。」

遠慮するジョンを連れて大学に戻った。





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