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…俺とあいつの処方箋…
第1章 失恋記念日
目の前に差し出されたケースは黒のベルベットで何やら店名が刺繍され指輪は見なくても高価な物と予測する。

『波瑠?外終わってるならレジ入ってくれ』
店から覗く唐沢が呼んでいるようだ。

『今行きます』
波瑠は戻ろうと踵をかえし優香に背を向けたが腕を掴まれた為に振り向いてしまった。

『修治さんを思い出すから指輪を持っていたくない……一方的に振られた今夜も…』

『俺も今日振られました…
だけど指輪はあなたが持っているべきです』

『お願い…持っていたくないの…』

この人の目からまた涙が落ちて、いくつか歳上だという感覚が消えていくよう…

『波瑠!レジ!』
唐沢が急かしてく。

あの人の涙に負けたのか?俺の手には持ってはいけないような――…
あの男が振らなきゃあの人の薬指に落ちつく物を受け取ってしまった………

そういえば奈緒美は泣くような女じゃなかったな…
過去形で思い出ださなきゃなんない事が振られた証拠だ…


17〜22時までの仕事を終えた波瑠は徒歩15分の場所にある自宅に帰っていた。

ご飯・風呂の後に授業ででる課題に取りかかるのだ。
ポートフォリオを机に置いた瞬間波瑠の意識は先ほどの出来事より明日の提出予定の課題へと移行していた。


――
―――朝、8時。
場所は波瑠の家のリビングになる。

『波瑠、あんた奈緒美ちゃんと結婚するのかい?』
母さんが俺の顔を見て疑わしき目を向けてきた。

はっ?
朝から何言ってんだ?

『脱衣場の棚にお洒落なケースでバイトを頑張ってるのは奮発して指輪を買う為なんて〜、母さんびっくりしちゃった』

はあぁ?
んなわけないない!

指輪受け取ってしまったんだ〜っ‥‥‥
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