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…俺とあいつの処方箋…
第1章 失恋記念日
駐車場には、
長身で濃紺のスーツに黒髪を後ろになでつけたオールバックでメガネの男性と、
ウェーブがかった栗色セミロングでクリーム色のスーツの女性が向かい合わせで口論している。

『私は嘘等言わない、
婚約は破棄と決定している』

『破棄だなんてあたし初めて聞いて…
修治さんの気にいらない事はしないようにしていたのに…破棄なんて何故?』
優香と呼ばれた女性は修治という男性の腕に手をかけた。

『そこなんだがね、
人の顔色を伺い尽くしているという態度が落ちつかない』

『あたしが?そんな風に――…修治さんお願い、考えなおしてください!』

ドン‥
すがりつく彼女を引き剥がし後ろに押した修治、
地面にお尻をつく優香。

『指輪――
売ればかなりな額になるから手切れ金がわりにしなさい』
修治はポケットから小さなケースを出し優香の足元へ放った。

『修治さんひどい!』
優香が立ちあがり彼を見つめるが、修治は彼女の頬をめがけて手をふりおろす。

『女の人に手をあげるなんて最低なんじゃないですか?』
優香の2メール後ろから走り出た波瑠がふりおろされる手を両手で止めた。

『部外者は黙っている方が無難だと言いましょうか、邪魔者が』

『腹がたちましたから』
修治より頭ひとつ低い波瑠が彼の上着を掴んだ。

『店の店員がお客の胸ぐらを掴んで脅したと責任者に報告してもいいなら続けたまえ』

『!!、―――っっっ』

バイトとはいえ俺はコンビニで働いている…
迷惑はかけられない――

波瑠は手を離した瞬間に修治が逆に波瑠の胸ぐらを掴んで睨む。

『修治さん関係ない彼にまで手をあげないで』
優香だった。

『………くだらない茶番だ、婚約は破棄する!
これからは社内で気安く名前で呼ばないでくれ』
それで終わりだというように修治は振り返りもせずに車に乗り走り出たのだ。

『お客さん?大丈夫ですか?』

『………指輪あなたにあげる』
優香はコーヒーでも渡すかのように諦めきった顔で波瑠をみた。

この人は泣いている…

指輪なんて?
指輪なんて!?
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