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女鑑~おんなかがみ~
第13章 水揚げ
「辛くはありません」
葵は慌てて答えた。
嘘ではない。

幼いころから家を訪ねてきていた,この恐ろし気な虎に食われることを,たぶん待ち望んでいたような気がする。だから,この人が水揚げをしてくださるのだと千鳥姉さんに言われたとき,心のどこかで少し待ち遠しかった。

でも……。
指先で触れられたところから,次々と波が押し寄せてくる,
乳房のくすぐったさが尖端に届いたと思うと、それは熱い波になってまっすぐ腰に達した。首筋と耳元を指で触られる感覚も我慢できると思っていたのに,胸の尖端から発した電流と合わさって大波となり、それも下腹部に押し寄せるのだ。

絶対に逃げてはいけない。逆らってもいけない。それはわかっている。そんなことは絶対にしない。どんなに辛くても耐えようと覚悟しているのだから。

でも……。
身体中からの熱い波がどんどん押し寄せてきて、もうこれ以上,じっとしていることができない。それが悔しくて涙がこぼれる。
このままでは変になってしまう。
両足のつま先を合わせながら、なんとかやり過ごそうとした。
さっきから熱い波が押し寄せるたびに,身体の中から何かが溢れてくる。
粗相をしてしまったのだろうか。みっともなくて耐えられない。

そうしていると,若槻さんの掌が太腿に触れている。
粗相をしていることが知られてしまうなんて嫌だ。膝を固く閉じた。
長い指先が,膝の隙間に割って入ろうとしてきた。

逆らってはいけないのだろうけれど,でも,あんな恥ずかしいことを知られるのは耐えられない。どうすればよいのかと混乱したまま,膝を固く閉じていると,太腿に痛みが走った。掌で太腿をぴしゃりと叩かれていた。

「逆らうなと言ったはずだ。力を抜いて足を開きなさい」
「申し訳ありません・・・でも」
膝が強引に開かれた。脛にも体温を感じる。若槻さんの膝で抑えられて足を閉じることができないことに気づいた。
焦って混乱していると,一番恥ずかしいところに,ひんやりとした長い指先が届いた。
「あ,ごめんなさい」
「ん,何が……。ああ,もう随分と濡れている。」
「申し訳ありません。」
「恥ずかしがらなくてよい。良くなってきたという証拠だ」
「…いや」
「少しは気持ちよくなってきたのではないか。」
「……」
葵は再び顔を背け,激しく首を振った。
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