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女鑑~おんなかがみ~
第14章 被虐
「昨日はご心配をおかけしました」
葵は,翌日,夕顔と千鳥に不始末を詫びた。
「大丈夫よ,本当に逃げたわけではないのだから。ちゃんと無事にすませたのだからいいのよ。今だから言うけど,私なんて,初めてのときは窓から逃げ出そうとしたんだから」
と千鳥は笑う。

 他方の夕顔は,泣き出しそうな顔をして黙っていた。夕顔は,初めてのときのことはあまり思い出したくなかったのだ。それが,葵がこうしてここにきてから,否応なしに辛かった経験を思い出してしまう。ときどき,葵の強気そうな眼が,あのときの大旦那様に似ていることを思い出して辛くなるのだ。

 すべては七年も前,材木屋のお坊ちゃまに恋をしたときから始まったのだろうか。
あんなに好きになった孝秀坊ちゃまとは結ばれることなく,その父親である大旦那さまによって無理やりに初めてを奪われた。そして遊郭での暮らしに小さな幸せを感じるようになった今頃,今度は孝秀坊ちゃまの妹,大旦那様の娘がここにきて自分と同じ運命を辿るとは。

 あの恋がもしかなっていれば,この葵,いや操子とは義理の姉妹になれたのだろうか。それとも,こんな貧しい生まれの,学校も出ていないような兄嫁は認めぬと言われたのだろうか。
**********

葵もまた,若槻の言葉を思い出しながら,隣にいる夕顔のことを考えていた。
葵はここへ来てから,夕顔のことを優しい姉のようだと思った。幼い日,スエという女中のことは何も知らなかったのに,葵=操子は兄との恋を壊した。そのことを知っているスエ=夕顔には恨まれても当然なのに,本当に優しくて,いつも心配してくれる。

酔っぱらったお客さんに絡まれていたら助けてくれるし,お得意さまがくれた上等のお菓子をいつも分けてくれる。そして昨日は,水揚げのときに逃げ出しそうになったとき,私が替わるとまで言ってくれたのだ。

女学校時代のあの日,あのような密告ではなく,内緒で兄からの手紙を届け,一緒に父を説得したりしていたら,あの材木問屋で義理の姉妹として仲良くできたかもしれなかったのに。

優等生でいたかったから,父から後継ぎとして期待されている兄に負けたくなかったから……そして恋愛などというふしだらなものを兄がしているのは許せなかったから。

でも,本当のところは,私のほうが淫らな女だったのだ。
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