この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
女鑑~おんなかがみ~
第15章 幻滅
「倉持先生,今日の帰りにおでんでもいかがですか」
夜学の商業学校の教員室で,佐伯が声をかけた。
「はあ,ありがとうございます。私はちょっと・・・・」
倉持孝秀は,いつもと同じように生返事をした。
「今日くらいはごちそうしますよ。倉持先生もちょっとは滋養のあるものを食べないと毒ですよ。
この前などは,授業中に教壇で卒倒して,生徒に介抱されていたでしょう。
あれはいけませんよ」
「はあ,そうですね。肝に銘じます」
「とにかく,今日は臨時収入がありましたのでね,奢りますよ。うまいおでんを腹いっぱい食いましょう。」
「それでは,お言葉に甘えて,いつもいつもすみません」
非常に優秀で,英語も簿記も経済理論も教えることができ,授業もわかりやすいと生徒からの人望も厚い倉持孝秀が,代用教員として職場を転々としており,いつまでも貧しいままであるというのは,教員室のみならず生徒の間でさえもちょっとした謎となっていた。
「今日は,私はね,倉持先生の謎を探りたいのですよ。」
佐伯はいかにも好好爺というような,人懐っこい笑みを浮かべた。
もう一般の学校では定年を超えているであろう佐伯も十分に謎の多い人物である。昼間の学校とは異なり,夜学の教師にはいろいろな事情を抱える者が多いが,そのなかでも佐伯と倉持は特にそれに当てはまりそうであった。

佐伯のほうは,なぜかいつも金回りがよいのだ。
夜学の代用教員の給料などは,経験や年齢による加算も少しはあるが概ね団栗の背比べであるにもかかわらず博物と図画を担当する佐伯は,ときおり同僚を小料理屋などに誘って奢る。服もよい仕立ての洋服を多く持っているらしくセンスがよい。
半年で中退した高等商業の制服のほかにはまともな衣服を持っていない孝秀とは大違いである。
/185ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ