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女鑑~おんなかがみ~
第15章 幻滅
「そのとおりです。だから,私は,あのような遊郭などというものはすべてこの世からなくすべきだと考えています。
だから,廃娼運動を行っている救世軍や矯風会に寄付をしたり,運動に加わったりしています。
けれど,ラッパや銅鑼を鳴らしながら吉原を行進してもスエさんが帰ってくるわけではありません。
別の人は,愛する人を遊郭から取り戻すためには,高い金を払って身請けしてやらなければならないと言います。
でも,そのようなことをすれば,女性を金で買うことになってしまう。客たちと同じです。
彼女は,姿も,心も美しい女性です。
彼女のような美しい女性が,汚れた世界に堕とされていると思うと,今も,給料を自分のために使う気分にはなれないのです。
そんなときに同僚が,給料が出たのできれいどころのいるところへ,などと話しているのを聞くと,許せなくて,つい・・・」
孝秀はいつの間にか夢中で語り続けていた。
先ほどまで十分すぎるほど心がけていた目上の人への礼儀や配慮をもはや忘れていた。

「成程・・・。まあ,若くて純粋な君らしいですがね。
そのようなことだから,可憐で清らかだと思っていた草花を,淫らなものとして描いたあの絵にも怒りと不快感を覚えたのでしょうね。」
穏やかに微笑む佐伯の顔が,一瞬,孝秀を嘲笑ったように見えた。
「いえ,決して,そのような,佐伯先生のお描きの絵は,素晴らしいと,常に・・」

孝秀は,心の中を言い当てられたことに焦った。
数日前に教員室で,佐伯が描いた花の断面図を見たとき,なぜか急にスエの姿が脳裏をよぎったのだった。
スエが男の前で恥ずかしい格好をしている姿,考えたくもない姿を思い浮かべてしまったのだ。

「まあ,嘘をつけない若さもよいものだ。
君の純粋な恋が実ればよいと,私も思いますよ。
心のなかで作り上げて愛した可憐な美しさが,壊されるというのは,お辛いことでしょうから」

「それは,どういう・・・」
孝秀は思わず気色ばんだ。さすがにこの場で暴力沙汰を繰り返すわけにはいかないと堪えたが,声は上ずっていた。
「では,私のお話も聞いていただきましょう。以前は妻がいたと申しましたね」
佐伯はそう言って,残っていた燗酒を飲み干した。
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