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女鑑~おんなかがみ~
第15章 幻滅
校長の兄の孫,ということは・・・,忘れかけていたものが脳裏に浮かびました。
初めて教壇に立ったときの教え子,十歳というのに七つか八つにしか見えなかった儚げな姿と,そして自分の不甲斐なさを思い知らされた忌々しい事件の記憶です。

「百合子と言ってね。そうだ,君が新任のとき,君の級にいたはずだよ。覚えているのではないか。早いものでもう十九になる。生まれたときは十年も生きられないと言われたが,まあなんとか永らえている。炊事や洗濯も女中の手を借りずに人並み程度にはこなせるし,特に裁縫と華道はかなりの腕前のようだ。裁縫女学校を卒業してから教師として残ってそのまま教えているようだ。まあ,本人が言うには,あの花嫁学校では,卒業までに嫁入りが決まらなかった失敗作がみな,そのまま教師として残るのだということだが。」
校長は自嘲するように言いました。
「ただ,百合子の場合は,事情があって,つまり,子を産むことができないのだ。ずっと病弱だった影響で,月のものも十九になって初めて少しあっただけだということだし,そもそも妊娠や出産は命取りになるので厳禁だと医師に言われている。
もう少し早くにこのようなことがわかっていれば,無認可の花嫁学校ではなくて,きちんとした高等女学校か師範学校に入れてやればよかったのにと私は思うが,当時は今よりも病弱だったので,勉強が厳しい学校は無理だと思っていたのだよ。

よく似た事情の者同士を安易にくっつけると思われるかもしれないが,百合子は裁縫学校に行ってからも,尋常科の佐伯先生が好きだと口にしていたのだ。」

まあ,このような経緯があって,私は百合子を妻として迎えました。私が二十八,百合子が十九でした。
私の小さな借家での新婚生活は本当に楽しかったです。多分,私の人生のうちで一番楽しい時間でした。
私は,兄が家督を継いだ後はずっと借家での一人暮らしが長かったので,一通りの家事はできましたが,彼女は何でもしてくれ,毎日の献立が見違えるように華やかになりました。私の安月給でも不平を言わず,倹約をしながらも工夫して料理を作り,それをまるで料亭の懐石料理かと思うように彩りよく盛り付けてくれました。
庭では花のほかに野菜を育てましたし,庭の草花をあり合わせの器に美しく活けてくれました。
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