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女鑑~おんなかがみ~
第15章 幻滅
幸せな結婚生活でした。
私は何よりも,百合子の気持ちを尊重しようと思いました。
芝居や音楽会,植物園,神社に寺,山に海,時間の許す限り私たちは二人で出かけました。
また,百合子にも自由な外出を勧めました。
嫁入りをした女は自由に出歩くこともできないというのは,あまりにも封建的です。
女学校の友達と出かけても習い事をしてもよい,裁縫女学校の教師を続けたいのならそれでもよいし,
自宅で弟子を取って華道や裁縫を教えるのならそれでもよい,好きなことをしなさいと言いましたが,
百合子は私と一緒のとき以外にはほとんど外出もしませんでしたし,教師をしたいとも言いませんでした。
家のなかで工夫して花を生けるのと,得意の裁縫で私の着物を縫うのが一番の楽しみのようでした。

しかし,普通の夫婦とは違う点がいくつかありました。
まず,百合子は私のことを常に「先生」と呼ぶことをやめませんでした。
もう夫婦なのだから,その呼び方は変だといくら言っても,「先生は先生ですから」と言って習慣を変えようとはしません。

それから,私は一度も百合子と肉体の交わりを持ちませんでした。
百合子は二十歳を過ぎても,十二歳か十三歳の,それも少女というよりは美しい少年のような身体のままでした。
子どもを望むことがかなわぬのなら,肉体の交わりなどは不要だと,私は考えていましたし,
あまりにも可憐で清楚な百合子を汚すということを想像しただけで私は嫌悪感を抱きました。

それでも私たちはほとんど毎晩,手をつないだまま床について眠りました。
百合子はときおり,私に身体を寄せて「先生,私たちは本当の夫婦にはなれないのですか」と切ないようすで尋ねましたが,
私は「いまも本当の夫婦じゃないか」と答えるのが常でした。
百合子がそれでも納得しないときには,「いつか,百合子がもう少し健康になったら,そのときにはね」と言葉を濁しました。

けれど,百合子が今より健康になったら・・という日が来ないことも,このように幸せな生活が長くは続かないこともわかっていました。百合子を幼いころから知っている医師は,二十歳を超えるまで永らえたのは奇跡で,あと二年か三年持てばよいほうだと言いました。
だから私は,少しでも百合子の姿を残そうと絵筆をとりました。
私は毎日のように,透明感のある色鉛筆や水彩絵の具を使って百合子の可憐な美しさを描き続けました。
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