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女鑑~おんなかがみ~
第15章 幻滅
「先生は,そのような厭らしい絵を描いて,お金を得ることを何とも思っておられないのですか。
失礼を承知で申し上げますが,不謹慎ではないでしょうか。」
慣れない酒で酔いが回り始めた孝秀が,憮然として言った。
「私は,正直なところ,先生に幻滅してしまいました」
「そうでしょうね。」
佐伯は静かに答えた。
「以前の私なら,君と同じように思ったでしょう。正直なところ,私も,百合子のあのような姿を見たときは衝撃を受けました。
病弱で清らかな女性だと思っていたのですから。
けれど,よく考えてみるとそれは,私のほうが勝手に,女性に対してそうあってほしいと願う像を押し付けていたにすぎないのではないでしょうか。

私は,小学校の学童たちに,身近な生き物,花や虫や鳥のことを教え,同時にこれらに関する研究を志したくて博物学に取り組みました。
子どもたちはよく,どうしてこの花はこんな形なのか,蝉は煩く鳴いてからすぐに死ぬのかと尋ねます。
正確に答えようと思えば,性的な営みによって子孫を残そうとすることに触れざるを得ません。それはお判りですよね。
けれど,学校では,花は私たちを楽しませるために咲くのだとか,蝉は夏の終わりを知らせるために鳴くのだとか・・・馬鹿馬鹿しい。

人間は幸か不幸か,より複雑な進化を遂げましたので,人間の性欲はより複雑です。苦痛を与えたり受けたりすることに喜びを感じる性欲は変態性欲として分類され,フランスなどの医学者が多くの本を書いています。邦訳は出るたびに発禁になっていますがね。けれど女を縛って責めるというようなことは徳川時代以前から遊郭ではしばしば行われていたことです。西洋では逆に男が縛られたり女に痛めつけられて悦んだりするようなこともかなりあるようですよ。個人的には理解できませんが。
しかし,今になって思えば,病弱だった百合子のことを,勝手に,あまりにも清らかで純粋な永遠の処女であると決めつけ,そのような像を押し付け続けた私のほうが,ある種,歪んだ性欲の持ち主だったのかもしれない。
そうは思いませんか」
「・・・わかりません。先生のような高潔な方が,性欲などという品のない言葉を使われるとは,ますます失望しましたよ」
孝秀は銚子に残っていた酒を手酌で飲み干した。
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