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女鑑~おんなかがみ~
第16章 献身
踊りの稽古やいろいろな集まりのたびにうわさ話が流れてくるようになった。

小紫の水揚げのときには,みやこ呉服の蔵が空になるという噂が大げさではないほど,最高級の着物が置屋にいる全員への祝儀として贈られたものであったが,一昨年に店を息子に譲って隠居されてからは,目に見えて祝儀も貧相になり,明らかに売れ残りの在庫や変色しかけたような着物が届くようになった。

きけばあの旦那様,いやご隠居は,子どもの頃の疱瘡であのような恐ろし気な顔になったらしく,店の主人であるにもかかわらず客が嫌うからと店頭に出ることを止められ,しぶしぶ嫁いできた妻も閨を共にすることを拒み,それでも何とか一人息子を授かったが,その息子は長ずるにつれて,美貌の番頭に生き写しになってきたのだそうな。そしてその息子に店を譲ってからは,物置のような離れにポツンと暮らしているのだとか。

そのような隠居の身となっても小紫への散財が辛うじて許されているのは,みやこ呉服で奥向きの用をこなす小間使いの少女たちを守るためであって,小紫を知る前の彼は,嫁入修行の行儀見習いを兼ねて小間使いをしている少女たちに見境なく手を出すので,店の番頭も奥様もその後始末に追われていたのだと。

どこまでが真実でどこまでが噂なのかはわからないが,同じ置屋にいる朋輩たちはどこやらでそのような噂話を仕入れてきては,もうあのような年寄りに義理立てしなくても,もう少し別の旦那を探したほうが良いと助言した。

けれどそうなると小紫はますます意固地になり,芸妓として一本立ちしてからは比較的自由が利くこともあってか,何があってもみやこ呉服の旦那様に尽くすのだと決めて譲らなかった。
逆に,このような噂話を聞くにつれ,これは何があっても私が旦那様に尽くさなければという思いをますます強くしていた。

……今思うと,あの子らには可哀そうなことを…
痛めつけられるのはせめて自分の身体だけにしておけなかったのか。

久子はため息をついた。
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