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女鑑~おんなかがみ~
第11章 嗜虐
二十年近く前,若槻は帝大を卒業し,ある省に入った。そこでも持ち前の記憶力の良さ,頭の回転の速さ,行動力によって上司に期待された。とりわけ,公家の出身で貴族院議員でもあった綾小路大臣からは,非常に可愛がられた。

あるとき綾小路大臣は,自邸で開かれたガーデン・パーティに若槻を招待した。英国に留学していた大臣は,何かというと自邸でガーデン・パーティを催したが,今回は娘の誕生日ということだった。若槻はガーデン・パーティとは何かわからぬまま,有名どころの洋菓子を手土産に持って出席した。大臣の邸宅は和洋折衷式で,和館と洋館が渡り廊下で結ばれており,洋館前の花壇に簡易テーブルが置かれて,サンドイッチや寿司や果物が振舞われた。
若槻は正直なところ,わざわざ立派な屋敷があるのに庭で食事をさせるとは変な趣向だと思っており,しかも,躾の厳しい士族の家で育った若槻にとっては,庭のテーブルに置かれたものを立ったまま食べるということにかなり抵抗があった。
 到着してすぐに大臣には挨拶したが大臣も他の客と談笑しており,娘の誕生日ということで,友達だろうか,美しい洋装をした少女たちが何人も走り回っている。しかし,招待を受けた部下としては何かお世辞を言わないわけにはいかず,しかも省内では,綾小路大臣のガーデン・パーティに招かれることが出世のカギだと言われていたので,どのように振舞うべきかと考えあぐねていた。
 そんなときに,
「輝虎お兄さま,こちらのサンドイッチは私が作りましたのよ」と愛らしい声がして,淡い水色のワンピースを着た美しい少女が銀のトレーに載ったサンドイッチを差し出した。
なぜこの少女が自分の名前を知っているのかも見当がつかなかったが,若槻は,
「それはありがとうございます」
とサンドイッチの一つをつまんで,ハムときゅうりを挟んだものを口に入れた。それより以前にどこかで食べたサンドイッチはカサカサでひどい代物だったので期待していなかったが,これに比べるとそれはかなり美味しかった。
「あ,おいしいね。ご馳走様」
と答えると,少女は踵を返して駆け出した。
「お父さま,お母さま,輝虎さまが,私のサンドイッチ,美味しいって」
「それは良かったね」と聞きなれた声がして,若槻は恐縮した。
「娘の千賀子だ。再来年には女学校を卒業するんだよ。君を慕っているようなので,仲良くしてやってくれ」
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