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『公衆便所姫』
第1章 -1-

僕には、恋人がいた。
この学校では知らない奴はいないんじゃないかって位、有名な男………相葉慶太。
慶太は、俗に言うソフトヤンキーに近い。格好つけた見た目はともかく、争い事は好まないし、買うのは売られた喧嘩くらい。

この学校に入学して直ぐ、僕はどういう訳か不良グループに目を付けられてしまっていた。見た目が小柄で、顔が女みたいだったからかもしれない。よく僕は、女の子に間違えられていたから。
不良グループの中心人物は、あの腰宮秀夫だ。
元々人付き合いが苦手で友達のいない僕には、余計に好都合だったんだろう。一人でいる所に近寄ってきたり、帰宅する道中で待ち伏せたり……
その度に僕は、男なのに、あの変態野郎に言い寄られた。『お前、本当は女なんだろ?』『なぁ、俺とセックスしようぜ』。俺の顔を見る度、幾度となくそう言われ、迫られた。
何で僕がこんな目に……。何度もそう思った。兎に角捕まらない様にと、警戒心を強めていた。
けど、どんなに注意していたって、気が抜けてしまう時はある。




あの時の僕は、まだそういう事を知らない身体で……そりゃ必死で抵抗したり、逃げ回ったりした。
でも、段々そうもいかなくなり……とうとう僕は、放課後、誰もいない音楽準備室に連れ込まれて……

「……大人しくしとけよ」

教室の前……窓際に置かれたグランドピアノの直ぐ横に組み敷かれ、

「……ゃ、だっ」

何が何だか解らなくて、兎に角手足をバタつかせて、必死で抵抗した。



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