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振り向けば…
第19章 ここまでだな…



それでも、その才能のお陰で最近は仕事を選べる立場にまでなったと言うてた矢先のスランプ。


「何が問題やねん?」

「何も思いつかん。」


悠真が私をじっと見る。

仕事帰りの私はそろそろお腹が減ってる。

ここはアホを見捨てて帰るべきか?

普段は虎のくせに仔犬みたいな目で私に縋る悠真を見捨てる事が出来ないのが家族というやつだ。


「掘り下げるんやろ?」

「鬼のように掘り下げた。」

「なら、見る角度を変えるとか…。」

「そんなもんは、とっくに試した。」


リビングのテーブルの上には悠真の仕事の資料が山積みになってる。

相当、入れ込んだ挙げ句に頭の中をその仕事でいっぱいにした悠真が簡単に想像が付く。

それでも何も思い付かないという事は悠真の才能が枯れたかもしれないと悠真が言う。

だから仕事を辞めるかを考えてたらしい。


「なら妄想してみろや。」


一か八かの話をする。


「妄想?」

「要するに悠真の場合、リアルに考え過ぎなんやろ?それを見た事がない人間として妄想してみろや。」

「俺、妄想って苦手なんよね。」


悪かったな…。

私なんか妄想だけで、なんぼでも泣いたり笑ろうたり出来んぞ。

今だって、自分の掘り下げ用のノートには妄想だけの思い付きをかなり書き込んでる。


「妄想…、つまり未来とか…。」


悠真がブツブツと言うて考え込む。


「悠真…、帰る。お腹空いた。」


さすがに私も限界だ。


「まぁ、待て!来夢。飯なら好きなだけ食わしたるから待っとけ!」


好きなだけ食わしたるって…。

今日は始めから食べ放題の約束やん。

久しぶりの悠真のアホっぷりに泣きたくなって来る。


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