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愛里 ~義父と暮らす小学六年生~
第3章 ゴールデンウィーク。旅行二日目
「あ、いたいた。おーい、こっち」

 幸彦が大きく手を振ると、その声に女性が振り向いた。線の細い、髪の長い女性だ。
 裾の長いスカートを風になびかせてこちらに歩み寄ってくる。

 愛里の母親の綾香だ。現在は幸彦の妻でもある。

「お出迎えありがとう」
「いえいえ。ここまで遠かったでしょ?」

 ううん、とはにかんだまま綾香が首を振る。

「大丈夫。愛里もお出迎え、ありがとうね」

 車の後部座席に座った愛里に優しく微笑む。幸彦に促され助手席に座り込む綾香に、愛里は曖昧な笑顔を返す。元気印の愛里にとっては珍しい。

「どうかしたの?」
「ううん」

 慌てて笑顔を作る。遊び疲れちゃったんだよね、という幸彦の言葉に綾香が笑った。

 幸彦に昨日の昼から立て続けに何度も抱かれ、それで素直にはしゃぐのは難しい。
 ここにくる直前まで裸でベッドの上にいたのだ。

 それに、と愛里は後ろから綾香を見ながら考える。

 なし崩し的に幸彦に抱かれてしまったが、これは母親を裏切る行為ではないのだろうか?

 いや、裏切りじゃない。裏切ってなんかいない。

 愛里は自分に言い聞かせる。

 幸彦の言う通り、体の弱い母は激しいセックスは出来ないだろう。愛里は知らないが、幸彦と綾香は結婚後、ベッドを共にしてもまだ体を重ねてはいなかった。

 だから、自分がその代わりをする。それだけ。それだけのこと…

 もし幸彦に愛想を尽かされてしまえば、綾香と二人また貧乏暮らしに戻らなければならない。綾香はきっともう、そんな暮らしに耐えられない。

 だから、大丈夫。お母さんを守るためでもあるの。そのために必要な事なんだ。

 愛里はそう結論を出す。

 そうしなければ、自分の行為への嫌悪で潰れてしまう。

 大人の行為を経験したといっても、愛里はまだ小学生なのだ。
 そして、その相手は義理とはいえ父親。

 自分を守るのでまだ精一杯。
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