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いつかの春に君と 〜 番外編 アンソロジー集〜
第1章 三日月夜にワルツを
夜空に輝く三日月…。
…士官学校の卒業式の前夜、ホールで二人きりでワルツを踊った。

…あの日以来、ワルツは踊っていない。
窓辺にもたれかかり、外国煙草に火を点ける。
仏蘭西製のそれは、和葉が愛したものだ。

…褒めてくれるか?和葉…。
俺みたいに操が硬い男もそうはいない。

…だれかを愛しても、いいのに…。
寂しそうな伊織を見る方が辛いよ。

…優しい和葉ならそう言うだろうな…。
伊織は紫煙と共に微かな笑みを漏らした。


和葉の家…篠宮伯爵家は和葉の戦死に伴い相続人を失い、お家断絶となった。


…不可思議な事件があった。
和葉の死後、軽井沢の別荘から和葉の兄と彼に仕えていた執事が忽然と姿を消したのだ。
兄は脚が不自由だった。
そんな主人を連れて遠くへ行けるはずもないのに、その二人の行方は杳として知れなかった。

事件とも事故とも着かず、暫くは世間を騒がせたが、やがてそのことを知る者もいなくなった。

夜半の月が傾きかけている。
…明日は…上層部からの命令で、救護院に視察に行かなくてはならない。
「国家に絶対服従し、死をも恐れぬ少年を探し出せ。
そしてお前が一から育てるのだ。
…優秀なドーベルマンをな」
上司は冷ややかに笑った。

…悪趣味な…。
伊織は眉を顰めた。
だが、命令には淡々と従うのみだ。

…ドーベルマンか…。
煙草の煙を吐き出し、露悪的に笑う。
…暇つぶしにはなるかも知れないな…。

窓を閉めようとして、もう一度三日月を見上げる。
美しい弧を描く月は、さながら和葉の唇のようだった。

…琥珀色の瞳を煌めかせ、愛を語ってくれたその唇…。
あんなにも美しいものを、未だに伊織は知らない。

伊織は静かに微笑む。
…お前に会えるのも、そう遠い未来ではないだろう…。

窓を閉め、部屋を横切る。

…いつか、街灯りの下で再び会いましょう…。
昔みたいに…。

レコードからは、愛の唄が流れ続けている。


伊織は、ゆっくりと三日月を振り仰いだ。

…おやすみ、和葉…。
また、いつの日か…ワルツを踊ろう…。


〜La Fin〜




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