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いつかの春に君と 〜 番外編 アンソロジー集〜
第2章 愛のバルカローレ
開け放った窓から暁の星と月が見えた。
…あと少しで、その光が黄金色の太陽に取って代わられそうな儚い…しかし、だからこそ煌めく美しい光だ。

二人はベッドに横たわり、抱きあったまま夜天を見つめていた。
…言葉は、いらなかった。
見つめ合うたびに唇を重ねた。
幾度口づけしてもしたりない…愛の行為を繰り返した。

薄墨色の空は、まるで夜の海のようだ。
ベッドに横たわり空を眺めていると、さながら船に乗っているようだった。

「…いつか伊織と、海を見たいな」
…瑠璃色の海ではなく、こんな…暁の海を…。

伊織が優しく笑って和葉を抱き寄せる。
「…見られるさ。お前は海軍で、俺は海軍所属の航空部隊だから。
…お前が乗る軍艦を俺が護衛することもあるだろうし…」
「…そうだね。きっと見られるね…」
伊織の大きな手が、和葉の艶やかな琥珀色の髪を愛おしげに撫でるのが心地よい。

…広い…どこまでも続く大海原…。
軍艦ではなく小舟がいいな…と、和葉は思った。
小舟に伊織と二人、波に揺られながら横たわる。

暁の星と月の光のもと…。
波音はきっと美しい唄のように聴こえるだろう。
…愛の舟唄を聴きながら、どこまでも行くのだ。
この、温かく大きな手を離さずに…。
…永遠に…。




〜la fin〜
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