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SWEET POISON「奴隷メイドオークション」番外編
第10章 辿り着いた場所
私の料理も、作っているうちに段々と上達してくる。
1人の昼間も菓子パンにせず、練習として、安くて簡単なものを作るようになった。
先週からは、自動車教習所へ通い始めている。それは、和哉の勧め。
家から10分歩けば駅前だが、買い物の荷物を持っての帰り道は厳しい。
駅前のスーパーには駐車場が無く、免許があれば駐車場のある少し遠いスーパーにも、平日に1人で行きやすくなる。週に1度の買い溜めでは、野菜が傷んでしまう。
最初は躊躇ったが、免許に学歴は関係ない。頑張って勉強するのも、今となれば何故か楽しかった。
チャイムが鳴り、玄関へ急ぐ。
「おかえりなさいっ!」
「ただいま……」
いつものようにキスと笑顔で出迎えてから、着替えている間に夕食の仕上げ。
シャワーを浴びた和哉がリビングへ来る頃には、テーブルに全てを揃えておく。そんな手際も良くなってきた。
夕食が終わると、片付けをしてから私がシャワー。その後は、恒例の晩酌。
平日はお互いにあまり呑まなくなったが、明日は土曜日。今晩なら、ゆっくりと呑める。
「教習所は、どう?」
「うん。面白い。私、才能あるかも」
私は笑ったが、何故か和哉は真剣な表情。
「えっと……。あまり、呑まないうちに、聞いて、欲しいんだけど……」
益々真剣になり、また何かあったのかと不安になる。
「梨香……。良かったら、なんだけど……。僕と、その……。結婚、して、もらえ、ますか?」
「え…………」
突然のことで、固まってしまう。
「サイズが、解らないから……。今、指輪は、無いけど……」
いつも通り言葉はゆっくりだが、真摯な瞳。言い切った、と言うように、大きな溜息をついている。
私は隣に座り、無言で抱き着いた。
優しく接してくれた人。一緒にいるのが、楽しかった。確証も無いのに、5年もの間、私を待っていてくれた和哉。
そして今、また彼の優しさに包まれている。
自然に涙が零れた。
私は、泣き虫ではなかったはずなのに。
だがそれは、感情を押し殺してきただけ。そのうちにいつの間にか、感情自体を失っていた。
そこから救ってくれたのも、和哉。