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SWEET POISON「奴隷メイドオークション」番外編
第10章  辿り着いた場所


 体を離して見つめると、彼も見つめ返してくれる。
「はい。私で、よければ……」
 彼の、ホッとした溜息が聞こえた。
「良かった……。ありがとう……。結納とか、結婚式とか。これから、ちゃんと、考えるから……」
 首を振る。
「そんなの、いらない。一緒にいられれば、それだけでいい……」
 和哉に、手を握られる。
 この優しささえあれば、他には何もいらない。
 心から、そう思える。
 彼と離れてからの5年、密かに想い続けていた。だがもう2度と会えない人だと、自分勝手に決めつけて。
 初めて出会った時も、再び会えたことも、偶然だとは思いたくない。
 運命という言葉は、今まで悪いことにしか使っていなかったが、今は幸せな運命だと素直に感じる。
 2度も、私の頑(かたく)なな心を開かせてくれた。
「でも……。梨香の、ウエディングドレス姿、絶対に、綺麗だから……。取り敢えず、明後日にでも、婚約指輪を、買いに行こう?」
 それには頷いた。
 彼は高価な物を選びそうだが、本当に、おもちゃの指輪だって構わない。証となる物で、ありさえすれば。
「和哉? 上、行こう?」
「あ、ああ……」
 抱き合うようにして階段を登り、彼の寝室へ行った。


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


 日曜、2人でジュエリーショップへ行く。
 こんな時用にと、私はブランド物のスーツを平日に数着買って置いた。それは、和哉にも勧められていたから。
 全てを打ち明けた時、5百万円の退職金のことも話している。彼は、「梨香が、大切に使えばいい」と言ってくれた。
 その言葉通り、生活費は全て和哉が出してくれている。
 今はブランド物に興味が無いが、少しくらい良い服を持っていないと、何かで彼に恥をかかせるかもしれない。だがその帰りに、ファストファッションの店にも寄ってしまった。
 時間帯によっては、薄い長袖も必要になってきたから。それは、出来るだけ安い物。
 和哉が選んだジュエリーショップは、やはり高級ブランド店。ネットなどで勉強して、決めたそうだ。
 いつも着けていられるものが良いと言い、私が選んだ指輪は、シンプルな物。
 私にとっては高価でも、彼は安すぎると言っていたが、値段など関係ない。


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