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SWEET POISON「奴隷メイドオークション」番外編
第1章 学生からの旅立ち
「梨香(りか)? 帰ったの?」
呼び止めるような母親の言葉に、私は足を止めた。
「何?」
日付はとっくに変わっている。私が家に戻るのは、いつもこれくらい。戻るのは、週に3日くらいだが。
「中学校の先生から、電話があったの」
酔っているらしい。派手なスーツのまま、リビング代わりのダイニングで呑んでいる。
40歳近い母親は、隣駅のスナックで0時まで働いている。父親の稼ぎで普通の生活は出来ていたから、母親の趣味だろう。自分の稼ぎの殆どは、ブランド物を買うために使っている。
「だから?」
「ちゃんと学校に行かないと、中学でも、留年があるんだって」
その話は何度も聞いた。
数時間寝て、つまらない授業を受けに行くなんて無理。両親共私に興味が無く、可愛がるのは2歳上の真面目な兄だけ。
昨日が私の15歳の誕生日だったのを、家族は覚えてもいないだろう。
「中学くらい、ちゃんと卒業しなさいよ。その後は、梨香の好きにしていいから」
いつもと同じ言葉。
それも怒っているのではなく、ダイニングに着いたまま、酒を呑みながら。
「解ってる……」
「じゃあ、おやすみなさーい」
母親がウイスキーを飲み干し、テーブルに置く。グラスの氷が、カラリと音を立てた。
「おやすみ……」
それだけ言って、私は浴室へ行く。
都心から大分離れた、2階建ての。4DK
何不自由ない生活。
だが仲が良いのは母親と兄、父親と兄だけで、夫婦の寝室は、10年以上前から別。
その中で、私は完全に孤立している。
服を脱ぎ、熱めのシャワーを浴びた。
別れた彼氏達に、形がいいと喜ばれていたDカップ。中学生になったばかりの頃はBカップだったのに。中学3年になり成長したのか、揉まれて大きくなったのか解らない。
体と髪を洗い、バスタオルのまま自室のある2階へ行く。途中にチラリと見た母親は、グラスに自分でウイスキーを注いでいた。
自室に入り、ドライヤーで長い髪を乾かす。
勝手に溜息が出てしまうのは、家が窮屈だから。肉親に愛されていない私がここにいても、邪魔なだけ。
早く家を出たい。それが、今の望み。
卒業まで、後5ヶ月程。それだけ我慢すれば、家を出られる。