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SWEET POISON「奴隷メイドオークション」番外編
第9章 決別の決心
「行ってらっしゃい」
「行ってきます……」
玄関でキスをしてから、会社へ行く和哉を見送る。
そんな小さな出来事さえ、幸せで堪らない。
離れるのは淋しいが、彼はまたここへ帰って来る。その時は、飛び切りの笑顔で出迎えたい。
幸せ混じりの溜息をついてから、エプロンをすると、身が引き締まる。
まずは、和哉の部屋の床掃除。
丁度終わった時にベッドが届き、男性4人がかりでセッティングしていってくれた。
後は各部屋の掃除。
元々綺麗だったらそう苦労することはなく、洗い上がった洗濯物を干したらおしまい。
乾燥器はあるが、下着以外は2階のベランダで陽に当てた。この方が、気持いいだろう。それに私も、何故か清々しい気分になれた。
これが、普通の生活。
そんなことから長く遠ざかっていたせいなのか、新鮮にも感じられる。
合間に、簡単な昼食を摂る。
昨日買ってきたパンには、避妊薬など入っていない。それさえも嬉しい。
夕方に洗濯物を取り込み、畳んでそれぞれの部屋のタンスに片付けた。
以前と比べれば忙しいとも思うが、その全てが、新しい生活へのスタート。
生まれ変われた私は、この場所を大切にしたいと感じる。
メールをくれた時間通りチャイムの音が鳴り、玄関へと走った。
「おかえりなさいっ!」
思わず抱き着き、和哉は戸惑った様子。
「た、ただいま……」
「どうしたの?」
「いや……。こんなの、初めて、だから……」
私と同じように、彼も初めて。そんなことも、嬉しいと感じる。
軽いキスの後、もう1度強く抱き着いた。
「まずは、着替えて、くるよ……」
照れているらしく、和哉は少し顔が紅い。
「すぐ、夕飯にするね」
「ああ……。簡単で、いいからね」
私には、まだ簡単な物しか作れない。ネットのレシピを参考にしながら、少しずつ覚えて行きたい。
夕食は、スープとサラダとパスタ。どれも、ボリュームだけはあるようにした。
和哉が、良く冷えた白ワインを出してくる。
来た時の冷蔵庫は酒類や飲み物ばかりだったが、昨日買い物をして、今は食材だらけ。
彼はこんなメニューでも、全て「美味いよ」と言ってくれる。和哉らしい。
「風呂、先に入る?」
「ううん。先に入って」