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契り【~初身世】
第3章 初身世【一人目】



※常夜視点





ー月琴楼…



『吉の國』に初めて来て、一週間経った…



「どう、苦しくない?」

「はい、大丈夫です。沙羅さん」


今の私は死神の黒いドレスではなく、真紅の着物を着ている。

着物と言っても胸が見えるように着崩し、黒い帯で締めて後ろに蝶々結びをしている。

着物丈が長く腰から下半身が未広がりになり、着物から覗く白いフリルが花びらのようだった。

胸には西洋の下着、白いコルセット、脚にはガーターベルトを着用している。

…「和洋折衷」と言うのかな?

死神の時はきっちり纏めている黒髪はおろして、上を少し結わき大きな簪が飾られている。

簪は金色で丸形に花が刻まれ、小さいビラビラが付いて小刻みに揺れていた。

シャラララ…と簪が鳴る。


「あとは、この口紅を…」

「…それは?」

「今この國で流行っている色よ。大人気でなかなか手に入らないけど、今日はあなたの初身世(ハツミセ)…特別よ!」

「あっありがとうございます!」

沙羅さんはリップブラシで丁寧に私の唇に紅を引いた。

「できたっ!」

「!?」

沙羅さんの言葉に閉じていた瞼を開けると、目の前にある鏡にはお化粧で彩り華やかになった自分がいた。

「沙羅、注文した香油が届いて…あらっ!見違えったじゃないっ!?」

襖が開き小さな箱を持った女将が入って来て、私を見るなり驚いた顔をして喜んでいた。

「フフ…綺麗よ!あなた化粧映えするじゃないっ!
羨ましいわ!」

「普段地味な格好だからね…素材が良いんだよ!」

沙羅さんと女将の言葉に恥ずかしくなる。

「そ…そんな事ないですよっ!?沙羅さんのほうがずっとずっと綺麗で素敵ですっ!!」

私を見立てくれたのは先輩死神で、神様達に人気がある沙羅さんである。

沙羅さんは頭がすごく良く、歌も舞も…立っているだけで華やかであるっ!

今だって、紫紺色と京紫色の着物に牡丹の花の帯。

ミルクティー色の髪を三つ編みで華やかに纏め、玉簪を2本、赤い平打簪を一本と薄紅色の花飾りをしている。

ミステリアスでアンニュイな伏し目の麗人だ!


同じ『女』とは思えないくらい差がある………


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