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契り【~初身世】
第3章 初身世【一人目】



「ありがとう。でも塁(ルイ)だって隅に置けないじゃない?」

沙羅さんは面白そうに笑いながら私を見る。

…塁と言うのは私の源氏名である。

「何しろあの『八咫烏様』が、自らあなたを指名したんだから!」

「………」

そうなのだ…

『吉の國』に来て次の日に…私の相手が決まった!

お相手は『八咫烏』


「…でも沙羅さん。『八咫烏様』に指名される事がそんなに珍しいのですか?」

弥勒さんと女将が驚きながら私に話していた。『吉の國』でも道を歩くとき、私の事をじろじろ見る人が多く『月琴楼』の女の子達は興味津々で話しかけてきた。

「彼はすごい身持ちが固くて有名なの。普段は修行して浄化しているから、此処に来るのは年末か正月の宴くらいっ!私も何回か会って話した事はあるけど…相手をしたことがないの。」

「…そうですか。」

私は不安が混み上がり下を向く。

「大丈夫よ!彼は近寄り難い雰囲気だけど根は優しくて情に厚い方だから。」

そんな私の背中を沙羅さんは優しく撫でて頬笑む。

沙羅さんの優しい気遣いに私は少しだけ安心した。

「大丈夫です。心の準備は出来てます!」

「よしっ!その意気よ!」


私達が話していると、襖から女将の声が聞こえ…


「塁、『八咫烏様』がお目見えになったわよ。」



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