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契り【~初身世】
第1章 渡り橋



ーヒュウゥゥゥ…


薄暗い川岸に大きな橋が立っている。

橋の向こうは見えなかった…

辺りは静かで…人の気配がない。

聞こえるのは川の流れる水の音と風の吹く寂しい音だった…

橋の白い壁に一人の少女がポツン…と座っていた。

少女は下を向き、動かずにいた。





「…驚きましたね」

「…」


少女の目の前に一人の男性が立っていた。

「この『橋』はまだ未完成ですから…死者の魂は来ないと思ってました。」

「…」

男性は帽子を取り自己紹介を始める。

「私は『弥勒』…君は?」

「…」

「なぜ黙っているんです?」

「…」


男性が聞いても少女は黙って下を向いたままだった。

男性は小さいため息を吐き、

「未完成とはいえ、この『橋』に来たのなら…君は望まない死を迎えた事になる。そういう者には現世に未練が残る…だから君にはこれから4つの魂の選択ができる。」

男性は黒縁の眼鏡をクイッとかけ直し話始める。

「1つ、すべてを忘れ天国へと旅立ち再生の時を待つ」

「2つ、受け入れず妖怪になり現世を彷徨う」

「3つ、悪霊となり現世の者を呪う」

「4つ、別人となり異世界へと転生し第二の人生を歩む」

「この4つの内、1つを選らばなければならない。」

「…」

男性の話が終わると少女は顔を上げて虚ろな眼で男性を見る。

「…どうしたんです?」

男性が訪ねると少女は生気のない小さな声で…

「………わからない。私…もう消えて無くなりたい。」
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