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第5章 人魚

受付の横を通り過ぎ通路の突き当たりに到着すると、人魚のブロンズ像が置かれていた。

腰丈ほどの台座に載った人魚は岩の上で尾ひれを横に投げ出し、右手の人差し指と親指で摘まんだサクランボにキスしていた。

それだけを見ると愛らしく感じるのだが、彼女の表情から何ともいえない寂しさを覚えた。

なぜか、この人魚をこの場から逃がしてあげたいという衝動に駆られる。

こちらでお待ちください、と太めの店員がいった。