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第10章 フレグランス

これが夢にまで見た女性の唇というものなのだ。

あまりにも柔らかすぎて傷つけてしまうのではないかと心配になってしまう。

「キス」という初めての感覚に戸惑うばかりで何をどうしていいのか全くわからなかった。

そのままじっと彼女が起こす次の行動を待てばいいのか、それとも抱きしめて唇をもっと押しつければいいのか。


キスを経験する前は、神聖なものをイメージしていた。

だが実際は、キスをしている最中は、様々なことが頭の中を駆け巡り、キスを味わうような余裕な微塵もなかった。

ただ、股間だけは智広の意志に反して暴走していた。

落ち着け、と自らの愚息に心の中でいい聞かせた。