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花の輪舞曲
第1章 夜啼鳥の小夜曲
その日の夜半…湯を使ったのち寝間着の着付けを済ませ、志津が笙子の髪を梳っていると、襖が静かに開いた。

寛いだ着物に着替えた岩倉が現れたのだ。
志津は慌てて、頭を下げる。
「まあ、申し訳ありません。お嬢様のお支度はもう間もなく終わりますゆえ、少しお待ちくださいませ」
髪を梳る手を急ごうとすると、岩倉は穏やかな微笑みでそれを制した。

「それには及びません。私が代わりましょう。
志津さんはもうお休みください」
「…まあ…!」
夫が妻の髪を梳るなど、極めて稀なことだ。
志津は驚いたのち、この若く美しく前途有望な男が、主人にどうやら夢中であることを垣間見、胸を撫で下ろした。
また、うぶな笙子が昨夜無事に、新妻の勤めを果たせたらしいことに殊更安堵したのだ。

笙子は恥じらいのあまり、俯いてしまった。
「大丈夫でございますよ。今宵も旦那様にすべてお委ね遊ばせ…」
志津はその桜色に染まった可憐な耳にそっと耳打ちすると、素早く部屋を辞したのだ。

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