この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
花の輪舞曲
第1章 夜啼鳥の小夜曲
…その日から、環は笙子をモデルに絵を描き始めた。

場所は岩倉と笙子の住まいになっている離れの客間だ。
母屋は人の出入りが激しいし、子ども達がばたばたと走り回り落ち着かない。
そう、環が言ったのだ。

「楽にしていいよ、笙子ちゃん。ポーズ、苦しくない?」
環は笙子のことを「笙子ちゃん」と呼ぶようになった。

笙子は環より年上だし、ちゃん付けは面映ゆい…と告げたのだが、
「だって、笙子ちゃん可愛いから…。俺より二つ年上とは思えない。
…それに…」
不愉快そうな貌をして、ぶすりと言った。
「千紘と同じ呼び方をしたくない」

笙子はもう何も言えなくなってしまったのだ。

笙子は天鵞絨の長椅子に腰掛けたままの姿勢だ。
特に疲れることはない。
「…ええ、苦しくはないです。
それより…環さんはずっとデッサンされていて、お疲れにはなりませんか?」

環はデッサン用の鉛筆をさらさらと走らせながら、微笑んだ。
「ちっとも。だってずっと笙子ちゃんを見つめていられるから」
「…ま…」
笙子は思わず頬を染めた。

モデルになってほしいと口説いた日から、環はそれまでの皮肉屋めいた冷めた態度を一変させた。
口を開けば、無邪気に笙子への賞賛…そして愛を語るようになったのだ。

「好きだよ、笙子ちゃん。…君は世界で一番美しくて可愛い女の子だ。どうして俺は千紘より前に君と知り合えなかったのかな…」
男女の色恋ごとに疎い笙子は、直接的な環の言葉に戸惑いながらも、はっきりと断った。
「環さん。私は千紘さんの妻です。私は千紘さんを誰よりも愛しています。それをご理解いただけないのなら、モデルはもうできません」
環は肩を竦めた。
「わかったよ。…もう言わない。言わないから、俺のモデルを続けてくれ」

…どこか岩倉を感じさせる端正な眼差しで見つめられると、笙子はもう返す言葉を失ってしまうのだ。








/61ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ