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花の輪舞曲
第1章 夜啼鳥の小夜曲
…その夜、岩倉はいささか性急に笙子を褥に引き摺り込んでしまった。
「…あ…っ…ま…待ってください…」
無言で男に組み敷かれ…笙子は明らかに動揺していた。
岩倉の腕の中、笙子の華奢な身体は震えていた。
岩倉が手荒く扱うことなど、かつてなかったからだ。

…二人はまだ結ばれてはいなかった。
最近、漸く上半身を岩倉の前に晒すことを許すことができた笙子だ。
それだけでも羞恥に打ち震え、消え入りそうになる笙子を、岩倉は焦せらせることなく辛抱強く待ち続けていた。

…けれど、今夜は…。

「…今宵は、貴女のすべてを見せていただきます」
怖がらせることはしたくなかった。
ましてや、笙子には深いトラウマがある。
笙子には、岩倉の愛だけで開花して欲しいのだ。
組み敷いた少女の身体の稜線を優しくそっと撫でる。
「…貴女と、身も心もすべて…ひとつになりたいのです」

その言葉を聞いた途端、笙子は美しい双眸から水晶のように煌めく涙を一雫零した。
「…ええ…もちろんです…。
ごめんなさい…私の我儘で…千紘さんをずっとお待たせてして…」
「謝らないでください。貴女は我儘などではありません。
…いつまでも貴女を待つつもりでした。…けれど、私は未熟な男です。精神科医なのに…貴女の前ではただの恋に迷う哀れな男でしかない。
貴女をこの腕に抱きたい…一刻も早く…。
その肉欲から逃れることができないのです。
…軽蔑しますか?」
笙子は強く首を振り、岩倉にしがみついた。
「いいえ、いいえ!千紘さん。…私は嬉しいのです。
貴方にそんなにも思っていただけることが…」
震える笙子の唇が自分から岩倉を求める。
掬い上げるように抱き寄せて、唇を奪う。
静かな寝室に二人の荒い息遣いだけが響き渡る。

濃厚な口づけを交わしながら、岩倉は笙子の白い夜着を巧みに脱がす。
…羽衣を奪われた天女のように儚げな姿が岩倉の牡を刺激する。

帯を解き…裾を払い、禁断の下肢を露わにしてゆく…。
着物なので、下着は付けてはいない。

「…ああ…い…や…」
…とうとう己れの生まれたままの姿が晒されたと言う事実に、笙子は両手で貌を覆ってしまった。

「…綺麗だ…笙子さん…」
岩倉は、目の前に露わになった笙子の裸体に思わずため息を吐いた。






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